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戦前戦中の「大日本帝国」と戦後の「日本国」の違いについて Part 1

 現在の日本の教育やマスコミの様子を見ていると、第二次世界大戦で敗北した後の現在の「日本国」と、戦前戦中の「大日本帝国」をかなり混同した形で説明しているところがあるように見受けられるので、今回からそのことについて、幾つかの観点から述べてみたいと思います。

 

1、戦前、戦中の「大日本帝国」と、戦後の「日本国」は、一見、形式的に似ているように見えるかもしれないけれど、政治的な実態としては、ほぼ全く違う国である

 一つめは、これは単純な話なのですが、現在、日本に住んでいる国民のみなさんの立場からすると、自分のお爺さんやお婆さんや、その前の世代の時代までは「大日本帝国」だったので、何となく戦前、戦中の「大日本帝国」も、戦後の「日本国」も、あまり大した違いがないような感覚を持つかもしれないのですが、単純に言って、戦前戦中までの日本は、当時の天皇を中心とした特権階級の人々が、政治や軍事の中枢をほぼ完全に支配していた「天皇の国」の「大日本帝国」(つまり、天皇の国の「帝国」、あるいは「皇国」)で、それに対して戦後の日本は、現在の国連の前身に当たるような連合国が、当時の昭和天皇を中心とするような特権階級の人々の権力をほぼすべて取り上げて、国民の中から選ばれた国民の代表が政治を行う「日本国民の国」の「日本国」(つまり、日本に住んでいる「市民(国民)の国」)になったので、何となく日本では、戦前戦中も戦後も、ずっと同じ国が続いているように感じられるかもしれないのですが、戦前戦中の日本と戦後の日本では、政治的な実態としては、ほぼ正反対と言ってもよいくらい全く違う国のあり方になっているということです。

 つまり、戦後の日本では、一応制度上は、天皇制は、形だけはそのまま残っているのですが、戦後の日本の天皇制は、諸外国の王制と比べると著しく権力が制限されている上に、実際には、国民の中から選ばれた国民の代表である「首相」を中心とした「内閣」が、政治的な実権をほぼすべて掌握するような体制になっているので、一応制度的には、「首相」や「内閣」と呼んでいるのですが、政治的な実態としては、国民が直接選んだ「大統領」が統治する「共和制」に極めて近い政治体制になっています。

 実際、よく考えてみると、特に現在の日本の衆議院選挙では、自民党や民主党といった代表的な党の党首(総裁、代表)を中心とした議員を選ぶことで、多少間接的な形になるのですが、ほぼ半自動的に総理大臣を初めとするような内閣の主要な人々と議会の主要政党が決まってしまうようなところがあるので、一応、「衆議院選挙」という名称にはなっているのですが、選挙の実態としては、日本国民の中から選んだ国民の代表である日本の「大統領」と主要政党を決めているのと、あまり違いがないようなところがあります(参考1参考2参考3)。

※「天皇(英語だと「emperor」で、皇帝と同じ表記です)」という名称に関しては、戦後の日本は、王国連合の「帝国」ではないので、本当は一国の王としての「王」や「王制」と言った方が正確な表現になります。あと歴史的には、江戸時代ぐらいまで日本は、ずっと隣の中国や朝鮮から、いろいろな文化を輸入することが多かったために、本当は、いつから昔の中国の「皇帝」とほぼ同じような意味を持つ「天皇」という名称を使ったのか、かなり不自然なところがあります。実際、近代に朝鮮と国交を正常化する際には、そうした名称の件でかなり揉(も)めているので、本当は江戸時代以前は、国内では「天皇」や「帝(みかど)」と名乗っていたが、国外では「王」を名乗って外交を行っていたか、あるいは明治以降、大幅な歴史の記録の書き換えを行ったかのいずれかだったと思われます。

※大まかに言って、国の政治のあり方としては、国王や皇帝が国を治める「王国」や「帝国」、いわゆる「君主制」と呼ばれるものと(現代では、君主制の国々でも、国民から選んだ内閣による政治が行われているところも多いのですが・・・)、国民の中から選ばれた国民の代表である「大統領」が国を治める「共和国」、いわゆる「共和制」と呼ばれるものの大きく二つのタイプがあります。ところが、日本の政治体制の場合はかなり特殊で、一応、君主としての天皇や皇族はいるのですが(華族(貴族)はいなくなりましたが・・・)、第二次世界大戦の経緯で、国際的な信用をすっかり失ってしまったにも関わらず(ナチス・ドイツが降伏した後の戦争の末期は、現在の感覚で言うと、日本一国だけで、国連と全面戦争しているような状況に近かったので・・・)、当時の日本は、全国民的な洗脳体制が敷かれていたために、一応、天皇制は存続させるけれども、政治権力は、ほぼすべて取り上げて、国民の代表が政治を行うような、形式的には君主制、実態は、ほぼ完全な共和制というような、国際的には、かなり珍しい政治体制になっています。ですから、何となく一緒と勘違いしやすいのですが、戦前戦中の「天皇」や「首相」や「内閣」や「国会」の意味と、戦後の「天皇」や「首相」や「内閣」や「国会」の意味とでは、政治的な実態としては、ほぼ正反対と言ってもよいくらい、全く違う意味に変化してしまっているようなところがあります。

 

 続く・・・(おそらく、不定期に話が続く予定です・・・)

 

Cecye(セスィエ)

2015年5月1日 9:03 PM, おすすめ記事 / 政治 / 歴史



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