1、霊的、現代的に見た、仏教の「一切皆苦」の思想について
まず一つめは、仏教の旗印にもなっている「一切皆苦(いっさいかいく)」、つまり、この世のすべてのものは苦しみである、というような教えについて、述べてみたいと思うのですが、先ほども述べたように、これは当時、かなり荒れた社会情勢になっていた古代インドや世界の国々の状況を見て、釈迦が述べていたものなので、はっきり言って、仏教が伝わって、しばらく経った後のインドや世界の状況や、さらには、ずっと時代が経った近現代の世界の状況を見た場合には、この人間社会は、それほど苦しみに満ちた世界ではなくなってきているのではないか、というように思われます。
おそらく、こうした釈迦の教えは、当時のかなり荒れた地上の世界で生きるインドの人々に対して、この物質世界で一生懸命生きることはよいにしても、いろいろな物事に対して、あまりにも強く執着して、不幸な苦しみの人生を送ることがないように強く諫めて、霊的な目覚めの一喝を与えるための教えだったのではないか、ということなのです。
ですので、当時の釈迦の教えとしては、「身の回りの物事にあまり深く執着しすぎて、苦しみの多い不幸な人生を送ることは避けて、できるだけ平安な幸せな人生を送ることを推奨している」というような捉え方はよいと思うのですが、そうではなく、「この世界の一切は苦しみなのだ」とか、「この世界はすべて不幸なのだ」などというような物の見方をすることは、現代社会の実情を見る限り、ほぼ完全に間違ったものになってしまっているようなところがあるのではないか、というように思われます。
Cecye(セスィエ)
2021年5月21日 9:09 PM, インド思想、ヒンドゥー教 / 人生観、世界観 / 仏教 / 宇宙文明、古代文明 / 宗教、道徳 / 歴史 / 知恵、正しさ