たいていの宗教の「天国」と「地獄」の内容においては、その時代のその国や地域において、多くの人々が、一番嫌だと思っている内容が、地獄の要素になり、その反対に多くの人々が、一番魅力に感じている内容が、天国の要素になっていることが多い
そうすると、次には「地獄」と「天国」の話になるのですが、実は、これは、さっきのこの世の否定とかなり密接に絡んでいて、たいていの宗教における地獄と天国の説明というのは、はっきり言うと、この世の世界において、多くの人々が、一番嫌だと考えるような内容が、地獄の要素になっていて、その反対に多くの人々が、一番魅力的に感じているような内容が、天国の要素になっていることが極めて多いということです。
それぞれの宗教において、多くの人々が、最も嫌がる地獄の要素と、多くの人々が、最も魅力的に感じる天国の要素について
これも具体的に言わないと、少し分かりづらいと思うので、具体的に解説してみたいと思いますが、代表例としては、大体、以下のような11の内容になります。
1、日差しのきつい暑い地域では、真っ暗な日陰があって、涼しい世界が天国で、日差しのきつい、明るくて暑い所が地獄になっているが、その反対に一年中、寒い国では、明るくて暖かい世界が天国で、その反対に真っ暗で寒い世界が地獄になっている。
2、多くの人々が貧しく、飢えて暮らしている地域では、物質的に豊かで、おいしいものが、たらふく食べられるような世界が天国で、みんなが貧しく、お腹をすかして、飢えている世界が地獄になります。
3、いつも戦争や犯罪が多い国では、とにかく平和で安全なのが天国で、いつも戦争や犯罪で荒れている所が地獄になります。
4、多くの人々が、病気や怪我で苦しんでいる地域では、とにかく健康で平安なのが天国で、その反対に病気や怪我の苦しみが蔓延している所が地獄になります。
5、国王が悪政を敷いて、贅沢ばかりして、国民が苦しんでいるような地域では、悪い王様が悪政を敷いている世界が地獄で、神仏やキリストのような聖人が統治している幸せな世界が、天国ということになります。
6、たくさんの戒律や法律があって、暮らしづらい地域では、大変な戒律や法律があって、恐ろしい拷問や刑罰のある世界が地獄、その反対に非常に簡単な戒律や決まりがあるだけで、みんなで気楽に楽しく、幸せに過ごせる世界が天国ということになります。
7、性道徳が厳しかったり、結婚や離婚の自由のない地域では、性道徳の厳しい世界が地獄、その反対に恋愛や結婚や離婚が自由だったり、性道徳が緩くて、わりとセックスがフリーな世界が天国ということになります。
8、教育環境が劣悪で、学問の自由のない地域では、自分の好きな勉強のできない、何も学べない世界が地獄、その反対に自分の好きなことを好きなだけ自由に学べるような世界が、天国ということになります(仏教の天国観では、よく「○○如来の尊い教えが説かれている」なんて話が多いですね)。
9、国中、どこもかしこも乱れていて、あまりきれいと言えないような汚い地域では、汚れた乱れた世界が地獄、その反対に、きれいで美しく整った世界が天国ということになります(ダメ押しで言うと、もう汚い都会でうんざりという場合には、美しい自然に囲まれた所が天国で、汚い都会が地獄になるのですが、その反対に国中、手つかずの自然だらけで、何もないような地域では、きれいな建物が並んでいる所が天国で、何もない手つかずの自然の所は、地獄のような扱いになっていることが多いようです)。
10、あれもこれも決まりだらけの不自由な地域では、何をやるにしても、言われたことしか出来ないような不自由な世界が地獄、その反対に何でも自分の自由にできるような世界が、天国ということになります。
11、人徳や能力のない人が、支配階級になっているような身分制の強い地域では、とんでもない悪い人が、支配階級になっている世界が地獄、その反対に有徳で能力の高い人が支配階級になっている世界が、天国ということになります。
例をあげるときりがないので、この程度にしておきますが、要するに古今東西問わず、たいていの宗教では、その時代のその国や地方の多くの人々にとって、一番嫌だと思われているような内容が、その宗教で信じられているような地獄の内容になっていて、その反対に、その時代のその国や地方の多くの人々にとって、一番魅力的と思われるような内容が、その宗教で信じられているような天国の内容になっているということなのです。
地球上の宗教の「天国」と「地獄」の内容を詳しく分析してみると、実際には、それほど統一された天国観や地獄観というのはなくて、それぞれの時代の、それぞれの国や地域ごとの多くの人々の生活感覚の違いによって、かなり違った天国観や地獄観が存在しているものである
ですから、これは、たいていの人は、あまり考えたことのない内容になるのではないか、と思われるのですが、実は、たくさんの宗教の天国と地獄に関する具体的な内容を、国や地域ごと、あるいは、時代ごとに並べ直してみると、例えば、ある国では、とにかく暗くて寒いのが地獄と言われているのに、別のある国では、とにかく明るくて暑いのが地獄だと言われていたり、あるいは、その反対にある国では、明るくて暖かいのが天国と言われているのに、別のある国では、とにかく影があって涼しいのが、絶対に天国の風景だと言われていたりするなどというように、実は、それぞれの宗教ごとにその時代や、あるいは、その国や地域の状況によって、天国と地獄のイメージというのは、かなり異なるというのが、実際の現実であったということなのです。
※一般に天国と地獄の具体的なイメージというのは、その宗教の魅力に直結するので、例えば、イスラム教を例にとると、現代だとイスラム教は、結構厳しい戒律で有名なのですが(よく考えてみると昔は、どこの国の宗教や社会でも、私は似たり寄ったりなのではないか、と思うのですが・・・)、ただ、それ以上に魅力的なのが、天国の風景になるのではないか、と私は思うのです。
イスラム教の天国のイメージというのは、まあ、みなさんもよくご存知の通り、中世初期の赤道直下のアラビア半島での天国のイメージであるために、「とにかく木陰があって涼しい」とか、「王様みたいに奥さんが何人もいて、ちょっとした贅沢な生活ができる」というようなイメージになっているのですが、ところが、いくらイスラム教が広がって、アジアの果てまで広がってきたとしても、例えば、東洋の一番端(はし)っこの日本ぐらいまで来ると、たいていの日本人は、「夏は涼しいのがいいけど、ここは年中、雨が降って、そこら中、森林だらけだから、砂漠と違って、木陰なんて、幾らでもあるし、君たちみたいに、そこまで暑いのが辛いとは思えないな・・・」とか、「ここは昔から性道徳が緩いから、そんな戒律守ってまで、たくさんの女性に囲まれたいとは思わないな・・・」とか、「ここは夏は暑いのが大変だけど、冬の寒さを乗り越える方が、もっと大変かな」などという具合に、結局、たいていの人は、あの世の天国の魅力や地獄の怖さと、それから、この世的な宗教の戒律の間で、損得勘定をあれこれ考えると、「まあ、ここはその時代の最先端の隣の中国の宗教か、伝統的な日本の宗教で十分かな」などというような結論になってしまい、中世において、あれほど全世界に勢いよく広がっていったイスラム教であっても、東洋の隅っこの日本ぐらいまで来ると、ピタッと勢いが止まってしまうようなところがあったのではないか、ということなのです。
追伸
この話の続きは、また来週になります。
Cecye(セスィエ)
2011年10月22日 9:11 PM, イスラム教 / コラム / スピリチュアリズム、霊界 / 人生観、世界観 / 宗教、道徳 / 歴史 / 知恵、正しさ / 社会、文化