昔は、確かに苦が多い世界であったかもしれないが、現在の世界は、だんだん物質的にも精神的にも、かなり苦の少ない幸福な世界に変わってゆきつつある
特に現代の先進国で生活しているような人には、かなりわかりづらくなってきているかもしれないのですが、少し昔の社会制度や科学技術が、かなり未発達な時代に生きていた人々にとっては、「この世の一切のものは苦なのだ」とか、「人生は非常に虚しいもので、この世の物事にあまり深く執着せずに生きることが大事なのだ」というような教えは、かなり身に沁みる、というか、人によっては、ほぼ完全に世界の真理のように感じられたのではないか、というように思われます。
ここでは、仏教の代表的な教えである「四苦八苦」の中の「生の苦しみ」、つまり、生まれる苦しみを例に説明したいと思うのですが、おそらく、たいていの現代人であれば、「生まれる苦しみ」などと言われても、「まあ、かわいい赤ちゃんが生まれてくるのに、何が苦しいのか、全然、わからない」ということになることが多いのではないか、と思われます。
ところが、それが少し前の時代になると、よほど栄養状態や医療環境に恵まれた家にでも生まれない限りは、そもそも乳幼児死亡率が非常に高いので、たとえ赤子として生まれても、まず最初の数年をうまく生き延びられるかどうかも定かでない上に、釈迦の母親も出産で亡くなっているようなのですが、昔のお産は、母子共々、かなり命懸けになることも多かったわけです。
また、たとえ、ある程度丈夫に育ったとしても、昔の身分社会の時代には、生まれてきた時点で、ほぼ奴隷的な労働に明け暮れるうちに一生が終わることがわかっているような人々が、非常に多かっただけでなく、さらに時代が悪いと、戦乱や飢饉や疫病や、様々な天変地異などで、かなり大変な人生を送るようになった人々も、かなり多かったようなのです。
Cecye(セスィエ)
2021年5月24日 9:03 PM, インド思想、ヒンドゥー教 / 人生観、世界観 / 仏教 / 宗教、道徳 / 歴史 / 知恵、正しさ / 社会、文化