2、高度成長期に台頭してくる、新たな指導者や富裕層の人々を中心とする経済的な大変化について
二つめは、今度は、そうした民主化や近代化が始まってから、しばらく経ち、国全体が、経済的に、だんだん非常に豊かになり始めた頃に台頭してくる、新たな指導者や富裕層の人々を中心とした経済的な大変化について、述べてみたいと思います。
これは、そうした時代の社会の中で生活していると、一見、ごちゃごちゃしていて、何が何だかよくわかりづらいことが多いのですが、たいてい、そうした社会の民主化や近代化の際には、あちこちで、「最近、あの人は、すごく幅を利かせているが、裏では、財界から、たくさんのお金をもらっていて、それで贅沢三昧してるらしい」とか、「あの役人は、大して働いてもいないのに、裏で賄賂をがっぽりもらっていて、とんでもない淫乱生活をしてるらしい」とか、「あの人は、大して頭がいいわけでも、仕事ができるわけでもないんだが、政財界に強いコネがあるので、とんとん拍子に出世してしまったらしい」などというような話を聞くことが、とても多くなるのです。
そうすると、たいてい、結構長い期間に渡って、そうした社会の情勢に関して、「今の政治は腐ってる」とか、「また、あの政治家が、お金の件で大問題を起こしたらしい」とか、「いつまで経っても、政治家や役人の汚職がなくならない」などというような政治の問題が続いてゆくようになります。
こうした際に、わりといつも清廉潔白に見えやすいのは、昔からの代々の王族や貴族であったり、同じく、昔からの代々の地方の名士であったりするものなのですが、ところが、たいていの国の歴史を見てみると、そうした政治の世界の腐敗に対して、多くの人々に担ぎ出されるような形で、昔からの代々の王族や貴族や地方の名士のような人々が、政治の中央に出てくるようになったとしても、なぜか多くの人々が期待していたほど、大きな政治の改革や社会の健全化のようなものは、実際には、なかなか進まないことが多かったようです。
それというのは、そうした代々の王族や貴族や地方の名士のような人々が活躍していた時代は、そうした民主化や近代化が始まる以前の社会の仕組みの時代だったので、新しい民主化や近代化の時代にふさわしい優れたリーダーシップは、なかなか発揮できない状況に置かれることが多いのと、それと先ほどの軍隊の話と同じで、結局、行政に深く関わると、他の政治家や役人と、ほぼ同じような問題に巻き込まれることが多いからのように思われます。
たいていの国では、こうした社会の状況は、短くて数十年、長い場合には、百年以上に及ぶような、かなり長期に及ぶことが多かったので、そうした時代の社会に生まれ育った多くの人々というのは、その人が生まれてから死ぬまで、ほぼ数年ごと、短いと、ほぼ数ヶ月ごとに、そうしたニュースを見聞きするようになったり、また、子供の頃から、そうした近現代の歴史をずっと学ばなくてはならないようなところがあったので、はっきり言うと、ほぼ一生、ずっと、そうした国の政治や社会のあり方の中で、人生を送ってゆくようになることが多かったのではないか、と思われます。
Cecye(セスィエ)