2、パウロ的な信仰観によって、非常に落ち着いた、穏やかで、平安な心境が得られるのは、確かに事実なのだが、多くの人々の自由性や自然な幸福感というものを、一律に全否定してしまうようなところがあるので、もともと、イエス自身が考えていた「信仰」の姿勢からは、かなり逸脱したものになっているのではないか
第二には、これも、よく考えてみると、かなり不思議な話であるのですが、とにもかくにも、キリスト教の聖書を読むと、イエスという人物の話が、当時の時代としても、また、その後の今日の時代の感覚としても、あまりにも霊的にぶっ飛んだ話や、相手の立場を全く顧みない行動が多すぎるので、私は、正直言って、このイエスの話は、かなり大部分が、後世、何らかの理由で、元々あったオリジナルの話を大きくすり替えて、作ったものだったのではないか、というように、率直に感じてしまうのです。
その中でも、特に、「ちょっと、これは、あり得ないのではないか」、と思われるのが、パウロ的な信仰観の部分になるのですが、それは、いったい、どんな内容になるのか、というと、簡単に言うと、「あなた、そこで、信仰という言葉で、一言でまとめてしまうと、後から、いろいろな人々が、自由に考えたり、自由に話し合って、決めればよさそうなものが、すべて信仰の一字でなくなってしまうことになるので、結局、あなたの弟子は、みんなお馬鹿さんになってしまいますよ」、というようなことに尽きてくるのです。
つまり、「ここは、もう少し、みんなで話し合って、決めるべきだ」、とか、「大きな教えが分かっているなら、後は、それぞれの個人で、ある程度、自由に考えたり、感じたりすれば、それで十分なのではないか」、とか、「あなたイエスという人に、直接、聞いたわけでもないのに、なんで、そんなこと、勝手に断定するんだ」、というような話が、パウロという人の言動の場合、非常に多いのではないか、ということなのです。
それでは、それは、いったい、どんな内容になるのか、というと、まず第一には、これは、冷静に考えると、「信仰」とか言って、個人個人の問題にするのではなく、単純に、多くの人々の間で話し合った上で、みんなで決めれば、それが、一番なのではないか、ということに関して、パウロという人は、あれこれ、「信仰」とか、「祈り」というような言葉を、ちょっと言い過ぎでいるのではないか、ということです。
第二には、これも、よく考えてみると、非常におかしな話なのですが、前にも、マグダラのマリアの話のところで述べましたが、元々のイエスと呼ばれる人物は、それほど厳格な戒律主義者ではなかったし、また、それほど性的に潔癖というほどの人物でもなかったにも関わらず、このパウロという人物の話では、ちょっと、いろいろな意味で、宗教的な厳格さや、特に性的な潔癖さを求めすぎなのではないか、ということです。
第三には、これも、かなり問題が多い内容になるのですが、正直申し上げて、このパウロという人物は、客観的に見て、キリスト教に改宗して、本当に幸せだったのか、ということが、私は、かなり疑問に感じてしまう、ということです。
なぜかと言うと、この人の言動を見ると、私は、「この人は、いつも何か、ものすごい使命感に突き動かされて、何かやっている」、というようなところまでは、よく分かるのですが、ただ、現実的に見て、「この人は、あまりにも宗教的に思い詰めすぎなのではないか」、というような感覚が、どうしても拭(ぬぐ)いきれないようなところがある、ということなのです。
つまり、最初に述べた、キリスト教的な信仰観の問題、つまり、自分自身の信仰的な感覚に、あまりにも強く、はまりすぎると、他の人々の言動を、多少、軽んじやすい一面が出てくるので、その結果、「この人は、いつも、周りの信者の人々からは、少し浮いた感じだったのではないのか」、というように、私は、率直に理解するのですが、そうすると、「そういう浮ついた感じの人に、そんな大伝道が、本当に出来たのかな?」、というのが、私には、そう簡単には、受け入れられない、ということなのです。
つまり、ここで言いたいことは、確かに、パウロ的な信仰観の世界に入ると、自分自身の心の状態としては、非常に穏やかで、落ち着いた、平安な心の状態が得られるようになるのですが、それにしても、その代償として、「それぞれの人々の自由な発言や考え方を、わりと簡単に封じることができる」、とか、「それぞれの人々の自由な欲求や行動を、あまりにも簡単に否定しすぎている」、とか、「それぞれの人々の幸福な感覚を、あまりにも簡単に否定しすぎている」、というような点において、本当は、このパウロ的な信仰観というのは、本当の信仰のあり方からは、かなり逸脱したものだったのではないのか、というように、私は、率直に感じてしまうのです。
Cecye(セスィエ)
2012年1月30日 9:02 PM, キリスト教 / スピリチュアリズム、霊界 / 人生観、世界観