再び、少し前の幸福主義の話の続きになります。
⑤現代の社会では、多くの人々は、学校や会社や家族との人間関係の行き詰まりから、そうした人間関係以外のペットや植物との触れ合いやオタク的な趣味や、さまざまな有料サービスや、少し偏狭な宗教コミュニティーの中に自分だけの真の幸福を見いだそうとし始めている
それから第五には、これはあまり考えたことのない人が多いのではないかと思われる内容になるのですが、現代であると結局、多くの人々は、学校では教師から散々緊張を強いられ、友人とも常に厳しい競争を強いられるようになっているし、また社会に出ても、毎日のように朝から晩まで忙しく働き、本当に心の底からリラックスして、本音で話し合えるような友達も家族も恋人もほとんどいないというような状況に置かれがちであるので、その結果、多くの人々は、次のような四つのことに自分自身の本当の安らぎや幸福の機会を見いだそうとするようになってきているのではないか、ということなのです。
まず第一には、家族に話しても、らちが明かないし、友人はいつも忙しそうだし、その上、素敵な恋人なんて、なかなか出来るものではないしというような人は、現代であるとペットや植物との触れ合いの中に、自分自身への慰めや癒しを求めていることが非常に多いということです。
第二には、これも現代では、どんどん増えていっている内容になるのですが、とにもかくにも、いろいろ複雑でややこしい人間関係が全くないような、ある意味で自分自身にとって、完全に理想的な一方的な人間関係を築くことのできる、いわゆるゲームであるとか、アニメやマンガの世界の中にひたすら没頭して、自分だけの幸福を探求してゆくような生き方になってきます。
第三には、これは最近だと、だんだん縮小傾向にあるようなのですが、いわゆる一昔前の酒やタバコや賭博によるストレスの解消とほとんど同じように、自分の使えるお金をできるだけ潤沢に使って、酒場やカラオケや、いろいろなサービスのあるバーや風俗のお店に出入りするような幸福の求め方ということになります。
それから第四には、これはほとんどマスコミは報道しないので、多くの人々はあまり知らないにも関わらず、そうした世界のことに詳しい人々にとっては非常に頼もしい、また非常に心安らぐ人間関係の機会を提供している場になっているのですが、いわゆる、ちょっと古いタイプの宗教ではなくて、せいぜい、ここ数十年以内の間に広まったような現代人の悩みや問題にも、そこそこ納得ができる程度の解決策を提示できるような宗教というのが、そうした人々を、わりと暖かく迎え入れてくれるような新たな人間関係の場になっているということが言えます。
さてそれでは、これらのものに共通する性質というのは、いったいどんなものであるのかというと、これはよく考えてみると、ちょっと怖いところもあるのですが、要するに自分は、普通の社会での人間関係では、本当に幸せな人間関係を築くのはもう無理なので、「この際、そうした複雑でややこしい人間関係からは少し距離をとって、せめてペットや植物との触れ合いの中に自分自身の真の幸せを見いだそう」とか、「ゲームやアニメの想像の世界の中だけの完全な自己実現だけを目指してゆこう」とか、「お金のかかるサービスによる、言わば虚像の人間関係の中に、とりあえずの安らぎやくつろぎを見いだしてゆこう」とか、「世間の人々は、別に理解してくれなくても構わないから、自分の信じる宗教の人々とのコミュニケーションの中に自分の居場所を見つけ出そう」というような考え方なのではないかということなのです。
つまり、はっきり言って申し訳ないのですが、もうこの場合には、いろいろな意味での困難や緊張感を伴う他の人々との人間関係の中に、本当の幸せや安らぎを見いだすというような姿勢はほとんどなくなっていて、そうではなく動植物や機械や、想像の世界や、有料のサービスや、かなり特殊な人間関係の中だけに自分自身の本当の幸福を見いだそうというような考え方になっているということなのです。
そして、その根本の理由をたどってゆくと、何のことはない、学校でも会社でも家族の間でも、常に平等な本当に幸福な人間関係を築けなかった人々が、何とか自分自身の精神を安定させ、明日への希望を見いだすために見つけた方法が、そうした人間以外の動植物や機械や、想像の世界や、有料のサービスや、特殊な人間関係の中で、その時だけでも難しい緊張感のある不自由な人間関係から自由となり、自分だけの自由な世界の中で、真に対等かつ平等な人間関係を模索して、そして本当の平安や悦びを見いだそうとしているのではないかということなのです。
Ｃｅｃｙｅ（セスィエ）
2011年8月17日 9:07 PM, 人生観、世界観
