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「和歌」や「俳句」といった一昔前の詩歌は、現代の感覚で言うと国民文化というよりは、せいぜい一部の有閑階級の間で流行った、一種の歌謡曲のようなものだったのではないのか Part 2

2、朝から晩まで大変な肉体労働に従事していた、当時の大多数の人々にとってのいろいろな物語や詩歌の役割というのは、現代の感覚で言うと、いわゆる映画やテレビの感動的なドラマや、アイドルやアーティストの楽しくて華やかな歌や踊りと大して変わりなかった

 第二には、これも現代だと非常に誤解が多いと思われるのですが、たいていの場合、そうした昔の詩歌に当たるものには、いろいろな音程の節(ふし)回しが付いていることが多いことから、はっきり言うと多分、そうした時代における詩歌の役割というのは、現代で言うと「大衆民謡」というよりも、もっとはっきり言うと多分、「歌謡曲」や、映画やミュージカルの歌の位置づけとほとんど一緒だったのではないか、と思われるのです。

 それというのは、これは現代人の感覚では、かなり分かりづらい感覚になってくるのですが、一昔前の農業や漁業や商業や手工業のような、わりと単純な繰り返しが多いにも関わらず、結構荒っぽい力仕事や、細かな技術が要求されるような単純再生産の仕事をしていた多くの人々にとって、そうした仕事や生活の大変さを忘れられる、ひと時というのは、これは現代だと、おそらくテレビやビデオや音楽の視聴や、仕事仲間や家族との会話が、それに当たっているのでしょうが、要するに日が暮れて、一日が終わって、家族や仲間で一緒に飲み食いしながらワイワイ騒いだり、あるいは、そうした時に、みんなで盛り上がれるような何らかの歌や踊りのようなことをすることだったのではないか、ということなのです。

 そうすると、そうした際に一番盛り上がる何らかの出し物というのは、おそらく、その土地に古くから伝わる何かの歌や踊りのようなものであったり、あるいは、その土地の昔の英雄やヒロインの話だったのではないか、と思われるのですが、その時に、たいてい一番盛り上がる場面で必ず出てくるのが、勇ましく刀や槍を振り回す立ち回りや、何らかの歌を歌ったり、踊ったりすることだったのではないか、と思われるのです。

 これは時代が変わって、現代のような時代になると、そうした英雄やヒロインの話は、テレビや映画の中のカッコいいヒーローや、美しいヒロインの話に置き換わり、それから、そうした楽しい華やかな歌や踊りは、アイドルやアーティストの歌や踊りにすっかり入れ替わってしまったわけなのですが、こうした目で見てみると、実は、一昔前にそうした物語や詩歌が果たしていた役割というのは、現代であるとテレビや映画のドラマや、アイドルやアーティストの音楽やダンスに、すっかり置き換わってしまっているのではないか、ということなのです。

 つまり、これは結構、意外なことであるのですが、実は、一昔前の時代にようにテレビも映画もなければ、CDやステレオもないような時代における物語や詩歌の社会的な位置づけや役割というのは、現代であると、それらは、もう完全にテレビや映画のドラマや、アイドルやアーティストの歌や踊りに、すっかり入れ替わるような時代になってしまったのです。

 

 続く・・・

 

Cecye(セスィエ)

2011年6月25日 9:44 PM, コラム / 教育 / 歴史 / 社会、文化 / 芸術、美



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